【格付けチェックでGACKT様が100万円のワインをはずさないワケ。】美味しいワイン=高いワインなの!?

こんばんは。ソムリエのサカナです。

4都府県の緊急事態宣言が”再・再”発令となりました。そしてなんと…

終日酒類提供禁止ですと~!!??

毎回叫んでばかりのサカナですみません。しかしこれは何とも辛すぎる…

飲食店でのアルコール摂取によって、理性のタガが外れ、気も大きくなり、もちろんいつもコロナの感染拡大防止に努めている国民の皆さんのため込んでいるストレスがはじけてしまうこともあるかもしれません。

一部のマナー違反の方々を懸念するあまり、きちんと節度ある人まで巻き込んで、飲食店でのアルコール摂取を禁止とするには、あまりにも局所的過ぎます…結局「外で飲めないなら、家で集まって飲もうぜ」「コンビニでお酒買って、公園で飲もうぜ」という話になるだけで、何の抑制効果にも繋がらない。寧ろ飲食店できちんと感染拡大防止の取り組みを行っているところであれば「検温・手指消毒の徹底・こまめな什器や設備のアルコール消毒・マスク着用での接客」などコロナ対策を行っているため、より安全に食事を楽しめると思います。

どれだけ充実したおうちごはん、そしておうちワインであっても、やっぱり外で食べる特別感はかけがえのないもの。いつもと違った空間で、なかなかおうちで食べられないお料理に、相性ぴったりの美味しいワインを楽しむ。一度知ってしまったら、これを失うことなんてできないでしょう。

このままでは日本の外食文化が廃れて、消えてしまう…

一刻も早く、前とは同じとは言わないまでも、自由に外で食事とワインを楽しめる日が来てほしい。そして、ワインのある幸せの中で生まれる、人と人のリアルな繋がりやご縁を、もっと気兼ねなく増やせる世の中になってほしい。サカナは切に願います。もう飲食店の疲弊も限界ですよ。

さて皆さん。お正月恒例番組「芸能人格付けチェック」で毎回出されるお題の中に「100万円の超高級ワインと5000円のワインのブラインドテイスティング」がありますよね。数年前から家にテレビのないサカナは、近年テレビを観ておりませんが…🐟笑

GACKT様&YOSHIKI様の超一流芸能人は、見事にこれを外しません。それはなぜか…先にサカナ的結論を発表しちゃいます。ずばり!

100万円のワインの味わいを知っているから=100万円クラスのワインをたくさん飲んだことがあるから

「そんなの当然じゃん~」って思われているあなた。そうです、当然なのです。ではなぜ当然なのかをサカナと一緒に紐解いていきましょう。

人間は比較をして初めて理解できる生き物

味の記憶は味覚を形成している

2011年8月、森永乳業と学習院女子大学の品川教授が小学校5~6年生(男女)とその母親の52組104名の母子を対象に、味覚について共同で実験した結果、

“味の記憶”を蓄積することが、“味覚”の形成に影響していること

が相関関係として判明しました。

実験内容詳細 ☞ https://www.morinagamilk.co.jp/download/index/1701/110927.pdf

実験内容は、基本五味それぞれに複数の濃度サンプル(5段階)を用意し、対象者がどの程度の濃度で味を判別できるかを測定。

子供より母親の方が味覚の判別レベルが高いという結果が出ました。これは味覚の判別レベルの高さは、経験値の蓄積によって向上すると捉えることが出来ます。

さらに味覚テストと同時に行った食生活アンケートと今回の結果の相関を確認し、五味判別レベルの上位者20%、下位者20%を比較したところ、判別レベル上位者と下位者には日頃の食生活に違いがあることが明らかに。

判別レベルが高い人たちは、“好き嫌いがなく”、“外食の際にはその食材や調味料を意識し”ながら食べています。これは、食への関心の高さや、多様な食品に触れる、ということにつながります。子どもではこの傾向がさらに顕著で、旬のものをよく食べ、珍しい食材も積極的に口にし、食品に関心がある、ということが明らかになっています。まさに“味の記憶”を蓄積することが、“味覚”の形成に影響していることが推察されます。

人の五感で最も記憶に残りやすいのは「嗅覚」

人の五感(視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)の中でも、匂いに対する感覚である「嗅覚」は、記憶に残りやすいと言われています。

視覚や聴覚などの感覚は、人間の記憶を保管する「海馬」という器官へ到達する前に、理性や思考などを司る「大脳新皮質」と呼ばれる部分を一旦経由しなくてはいけない一方で、嗅覚だけは特別。大脳新皮質を経由せずに直接海馬に到達します。「匂い」は「記憶」に最も強く働きかけられるのです。

嗅覚は人の持つ最も原始的な能力とされています。食べ物が腐っていないか、周りに異変はないか、生命を維持する上で瞬時に危険を察知できる「匂い」はとても重要。つまり「匂い」は、人の本能や感情を直接刺激するもの。そのため匂いの記憶は忘れにくいと言われています。

基準を形成した上で、比較をすると違いが理解できる

味覚と嗅覚はワインを味わう上でもっとも大事な2つの感覚的要素です。(もちろん視覚・触覚も大切ですが🐟)

そしてその2つの感覚的要素は、‟記憶する=経験値を積む”ことによって判別レベルが上がり、結び付いた記憶を呼び覚ますことが出来る。前述の内容からおそらく理解してもらえたと思います。

ワインに限らず、人間の判断基準や価値基準を形成するものって何でしょうか?

例えば「熱さ」というものについて考えてみます。
数字的に「40℃」と「100℃」でどちらが「熱い」かはあなたにとって明白ですよね。

でもそれはあなたの経験がその数字に結び付いているからではないでしょうか。「熱さ」の度合いを理解するためには、自分の身をもって様々な熱さに関する経験をしなければわかりません。

  • 40℃ ⇒「40℃の湯舟に浸かる」
  • 100℃ ⇒「やかんから噴きこぼれた沸騰したお湯に触ってしまう」

これが自分の記憶に結び付き、自分の身に与える影響力の大きさ」を持ってして「熱さの基準」が出来上がります。40℃くらいなら少し熱いけど気持ちいい、100℃は火傷するから危険⚠。ゆえに触れるのは50℃までが自分には限界かな…といった具合ですね。それもまた各個人の感度によってまちまちですが。(40℃がぬるいと感じる人もいますよね。)

そして、人は判断する基準値が形成されてはじめて、「比べる」ことが出来ます。「比べる」ことが出来ると、自分の中で「良し悪し」を判断できるようになります。

例えば「イチゴ」を例にしてみましょう🍓

同じイチゴでも「あまおう」と「とちおとめ」という品種の食べ比べをしてみます。

私はあまおうの方が好き!

と思ったとします。そこにはどういうプロセスが生じているのか読み解いてみます。

  1. 自分の今までの経験の中で、味覚と嗅覚を主体とした感覚が形成されている。(味覚・嗅覚の記憶⇒基準の形成)
  2. ①の味覚と嗅覚を主体とした記憶の中で、自分が最も美味しいと思うバランスに近い方を好きと感じる。(比較)

つまり、人が何かの「良し悪し」や「好き嫌い」などを決定づけるとき、無意識に

自分の中に形成された基準に基づいて比較をしている

ということです。

そして逆に言えば、何かを比較して判断するためにはより精度の高い基準が必要です。

GACKT様やYOSHIKI様がどうして「ワインの格付けチェック」を外さないか。それは、

高いワインと安いワインに対する判断基準の精度が高い=基準を作るための経験値が高い=100万円する高いワインを他の人よりもたくさん飲んだことがある

ということが言えるのです。

前回のワイナート(ワイン雑誌)の表紙を飾ったのが、このYOSHIKI様の手掛けたワインだったのですが、そのインタビューの中で、

たまたま、友人・知人に、すごい高級ワインばかり飲む人がたくさんいたので、(一緒に飲んでいるうちに)だんだん自分なりにいろんな味がわかってきました。カリフォルニアワインだったらスクリーミング・イーグルとか、フランスだったらロマネ・コンティとか五大シャトーとか。もちろん高価なワインだけを飲んできたわけではないですが(笑)…

スクリーミング・イーグルはカリフォルニア州ナパヴァレーのカルトワイン(=高品質ながら生産量が少ないため、なかなか手に入らないまるで「オカルト」なワインという意味)で50~60万。ロマネ・コンティは200万円くらい。簡単に飲めるわけね~( ゚Д゚)!!

美味しいワイン=高いワインではない

ワインが高くなる理由

では、「高いワイン=美味しいワイン」なのか?

そんなことはありません。

美味しいということももちろん大事な要素なのですが、それだけでは価格がここまで高くなることはありません。

ここまで値段が高くなる大きな理由は、

希少価値

のためです。

もちろん品質の高い美味しいワインを造るためには、葡萄栽培から収量制限を行ったり、適切な栽培管理を常に行い続け、重労働である農作業をこなして、品質の高いワイン用葡萄を育てます。適切な収穫タイミングを測るために、葡萄の実を分析し、糖度や酸度のバランスなどを検討し、狙ったタイミングで一気に収穫を行います。しかも、品質の高い葡萄を選ぶため、そして傷をつけないために人間の手でひとつひとつ収穫していきます。

また葡萄のポテンシャルを最大限生かすために、次の醸造の部分でも熟練の醸造家たちの手によって手間暇かけてワインは完成します。その醸造のための設備や人件費なども多くかかっています。また瓶詰めが完了してもすぐ出荷とはならず、高級ワインであれば熟成の期間が必要になります。つまり収穫された葡萄がワインになってあなたに飲まれるまで何年もかかっているものが高級ワインにはたーくさんあります。

そこにさらに生産量が限られている(葡萄の生産区画が限られていて生産量が少ない)にも関わらず、需要(そのワインを飲みたい!)と思う人の数が何倍、何十倍、何百倍と膨れ上がると希少価値がつき、ものすごく高価な値段で取引されることになります。

もちろん、手間暇かけて造られた美味しいワインはそれなりにコストがかかっています。そういった意味では、美味しいワイン≒高いワインではあるかもしれませんが、純粋にかけられたコストが反映されるレベルであれば、せいぜい10万円がMAX。(もちろんその年の葡萄の収穫量や造り方にもよります。)「格付けチェック」で比較対象として出される5,000円クラスのワインは、我々庶民からしたら十分立派な高級ワインなのです。

サカナ的な美味しいワインとは

ワインは「甘味・酸味・アルコールのボリューム・タンニン(渋み)」が主軸となる構成要素で、そのバランス感覚が取れているものがまず「美味しい」と感じる基準です。

そこのバランス感覚の中に、「香気成分・味覚成分の複雑さの度合い」、「余韻の長さと心地よさ」が追加点として加わり、「サカナ的に美味しいかどうか」を判断しています。

  • べたっとした甘さが突出した平べったいワイン(甘味が他の3つの要素とバランスを保っていない)
  • 酸味だけがとんがって、もう一口が進まないワイン(酸味が他の3つの要素とバランスを保っていない)
  • むんむんしたアルコールのボリューム感が大きすぎて、ワインのアロマが隠れている(アルコールが他の3つの要素とバランスを保っていない)
  • タンニンのざらつきが強く、さらにとげとげしくて飲み進められない(タンニンが他の3つの要素とバランスを保っていない)
  • 飲むことに抵抗はないが、何かこれといった特徴がない平坦なワイン(バランスはいいが、複雑さがない)
  • 美味しいと思うが、残り香がすぐ消えて記憶に残らない(バランスはいいが、余韻が短い)

もちろん、これはサカナ的な個人の捉え方であるし、ワインはあくまで嗜好品なので、好みはそれぞれ!そして、様々な意見があって、美味しいと思うものが違ったり、感想や価値観が違うからこそワインはみんなで一緒に飲むのが楽しくて、面白い🍷 ワインを飲むときは、絶対に相手を否定しないことが大切です。

そしてワインから様々な要素を感じ取れるようになるためには、

ワインを飲み慣れることが大切。

先ほどのGACKT様やYOSHIKI様のような高級ワインを飲めと言っているのではありませんよ!最初の味覚の記憶や嗅覚の記憶というものが人間には備わっているので、「味覚・嗅覚の経験値を上げること」で「ワインから感じ取れる要素が多くなる」ということ。

また「酸味や渋み、アルコール」は人間の本能的には受け付けられないものであったり、子供のころから鍛えられない要素であったりするので、慣れるまでには多少の時間が必要です。

ブラックコーヒーが飲めるようになったり、ある日突然美味しくなかったビールがめちゃくちゃ美味しく感じたりした経験はありますかね?

これは「苦味」という人間が本来「毒」だと認識して、本能的に受け付けないものに、味覚の記憶が結び付き、そして苦味に慣れて耐性がつくことによって、その奥に潜んでいたそのほかの美味しさを感じ取れるようになった状態です。

ワインも、コーヒーやビールのように飲み慣れる必要性のあるお酒。なので、出来るだけ(美味しい)ワインを飲む機会を増やすことが、脱ワイン初心者の近道と言えます。

高いワインを飲まなきゃいけないわけではありません。サカナも普段飲むワインは、1,000~4,000円くらいまでのものばかり。色々ワインに関する情報を得ている中で、サカナの気になっているワインリスト中から「飲みたい!!」と奮発して買うワインで、5,000~10,000円くらい。十分すぎるほどの高級ワインです。それ以上のお高いワインは、基本的に誰かに飲ませて経験させて頂いております🐟{アリガタヤー(´;ω;`)

前回の記事で書いた「亜硫酸塩」は全ワインには入っているものとして、それ以外の添加物「ソルビン酸」などが入っておらず、1,000円以上のワインを極力選んで飲むようにしてみましょう。それで十分にワインを味わう土台が形成されていきます。

ワインを飲みはじめて、「すっぱ!渋!」って感じるのが最初より和らいできたかも!ってときに、ぜひ5,000円くらいのワインを買ってみてください。何かの記念日とかにでも。ワインの情報を事前に調べて、飲みたい気持ちを掻き立てた謳い文句やストーリーのワインでOKです。ラベルの可愛さに心を打たれたジャケ買いでもOKです。

味わう準備の整ったときに、ちょっと奮発したワインがバチっとハマるともうヤバい。サカナも意識せずに前情報もなしに「シャトー2級格付け シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ド・ラランド 2002」をプレゼントでもらって飲んで、ワインの奥深い世界に一気に引き込まれました…ワインに運命の出会いはあるのです🐟🍷

ワイン初心者のあなたにも早くそんな運命の出会いをしてほしい。そしてワインに心を奪われてほしい。そこには奥深い大人の幸せな世界が待っています。

では、今日はこの辺で。
また次回をお楽しみに~🐟👋


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