【ワインの亜硫酸まとめ保存版】ワインを飲むと頭が痛くなるってホント!?それって「亜硫酸塩」のせいなの!?

皆さんこんばんは。ソムリエのサカナです。

基本的な「ワイン」についての知識を体系的に順序だてて教えていってもいいのですが、ブログ記事って読む順番とか関係なく、ランダムに読みますよね。最新記事とか。

なので「サカナのワイン講座」では、自分の気になった記事をあなたのタイミングで拾って、関心度の高いうちに吸収して知識に変えてもらう流れを大切にしていきます。自発的に知識を得ようとする姿勢の方が、もちろん効果的に吸収できますからね。ワイン初心者のあなたに一番大切なのは、継続的にワインに触れることです🍷

酸化防止剤(亜硫酸塩)とは!?

亜硫酸塩の正体を科学的に見る

①ただでさえ日本にはワインの情報が少ない…情報を正しく得ることから始めよう

それでは早速本題に入りましょう🐟今回は少し長くなりますよ~。

最近サカナの周りでよーく耳にするんですが…

「ワインって飲むと頭が痛くなるらしいよ…しかも酸化防止剤の亜硫酸塩が原因とか…」

という、ウ・ワ・サ♡
添加物に対して敏感な方からしたら、「なんか”硫酸”って文字入ってるし、怖くね?」って感じでしょう。

ワインのあれこれを知る前段階で、「酸化防止剤(亜硫酸塩)」なんて文字を裏ラベルに見つけてしまったら、一気にワインから離れてしまうワイン初心者さんもいるかもしれないですね…

もしそうだとしたら、ちょっと待っていただきたい!それは…

あなたの思い込みによる誤解です。

ワインに関する情報が未だ日本にはしっかりと浸透していないし、ワインに関して良質な情報を普及しようと各方面で現在努力はしているのですが、それが未だに根付いていない実情が原因…

日本のワインの歴史はまだまだ始まったばかりですからね。このブログをサカナが始めたキッカケもそんな状況を変え、「日本の皆さんにもっとワインについて知ってほしい。親近感を持ってほしい。そしてワインのある幸せを楽しんでほしい。」という熱き思いがあるからです。

そしてサカナもワインのプロ「ソムリエ」でありながら、ワインの良質な情報を得ることにやっぱり苦労しています。。意欲的に様々な情報を収集して…ようやく記事を書くに至っている現状…(しかしあなたの幸せなワインライフのためにもちろんこれからも頑張っていきます🐟👍)

サカナのワイン講座で学ぶワイン初心者のあなたは、「正しい情報を知ったうえで」初めて自由な選択をしてほしいと思います。

人間にはそれぞれの価値観がありますから、「添加物は絶対悪」とみなしている方だっているでしょう。それは各個人の自由です。

ただし保存料などの「添加物」がなければ、私たちが毎日安定して、かつ安心して、「食べる」ことに困らず生活するには至らなかったでしょうし、食べることの選択肢の幅をここまで広げて日々様々な食シーンを楽しむこともできなかったはず。

何事も良い側面と悪い側面の両方を鑑みて判断することが求められるはずなのです。覚えておいてください。
そして高品質なワイン造りには「亜硫酸塩」は必要不可欠なのです。

ちなみに、このトピックスでは少し科学のお話も入ってきますが(サカナも全然理系じゃないので、一般常識の範囲だよ🐟)ついてきてくださいね。論理的に理解することが大切です♪

②亜硫酸の正体

話を戻しましょう…

二酸化硫黄ってご存じですかね。日本の皆さんは知っているはず。
温泉街でモクモクしている「卵の腐った匂い」とかで表現される、「硫黄くさーい」ってあれです。
亜硫酸ガスとも言われる気体です。

二酸化硫黄は水に溶け込むと水と反応して亜硫酸になります。

SO2 (二酸化硫黄) + H2O (水) ⇒ H2SO3 (亜硫酸)

亜硫酸塩は亜硫酸とナトリウムが結び付いた白色の個体。見た目は白い粉。これが添加物として活用できる状態で、水溶液の状態でも用いられます。ワインに入れば亜硫酸になります。

理解を簡単にするためワイン内では「二酸化硫黄≒亜硫酸≒亜硫酸塩」と捉えていただいて構いません。ワインに与える作用としてはどれも同じ作用なので。

そして一般的にあまり知られていないのですが、実はワインを醸造する過程(アルコール発酵)で酵母が硫黄化合物を自然に生成するため、天然由来の硫黄化合物がすべてのワインには含まれています。ワインの中では亜硫酸の状態。

つまり、

「酸化防止剤(亜硫酸塩)無添加ワイン」はあったとしても、「酸化防止剤(亜硫酸塩)ゼロワイン」は存在しないということ!

さらにワインに関して長い歴史を持つヨーロッパにおけるEUでは、2005年11月から二酸化硫黄(=亜硫酸)を10mg/ℓ(10ppm)以上含むワインは、ラベルに「Contains Sulfites(二酸化硫黄[亜硫酸塩]含有)」と明記することが義務付けられています。自然発生的にワインの中で亜硫酸が存在するのですから、事実上ほぼすべてのワインが亜硫酸塩を表示することとなりました。

EUで亜硫酸の表示が義務化されたのにも、もちろん意味があります。

それはアレルギー体質の方や喘息患者は極低濃度でも発作を引き起こす可能性があり、医師によるアドバイスを受けている方は避けた方がよいからです。表示が明記されていなければ、そのような方々が誤って摂取してしまうことになりかねません。命を守るために大切なことです。

ただし安全基準を順守しさえすれば、上記の病をお持ちでなければ人体には無害です。
抗酸化作用によりワインを酸化から守り、葡萄本来の香りや味わいを守りながら私たちの目の前で、安全に飲める状態をキープしたまま、グラスに注がれるということが可能になります。ワインになくてはならない非常に使い勝手の良い添加物です。

さらに亜硫酸の役割をわかりやすくまとめると、

  1. 発酵前のブドウ果汁が傷んだり、雑菌が増殖したりするのを防ぐ
  2. 酸化による劣化を防ぐ

添加のタイミングは、醸造家の判断で収穫後、破砕時、アルコール発酵時、マロラクティック発酵時、ボトリング時など随所で行われます。経験と知識がものをいう職人の世界ですね。

なぜ段階的に使用するのか。それは亜硫酸が反応物質であり、遊離型亜硫酸と結合型亜硫酸を合わせた総亜硫酸という性質であるからです。

遊離型亜硫酸 + 結合型亜硫酸 = 総亜硫酸

もちろん規定値として定まっているのは総亜硫酸量であり、人体に有害なレベルにまで絶対量が増えることはないので安心していただきたいのですが、ワインにおける抗菌効果や抗酸化効果をもたらすのに重要なのが「遊離型亜硫酸」の方です。

この遊離型亜硫酸が悪さをする様々なもの(酢酸菌やアセトアルデヒドなど)とくっついて、結合型亜硫酸になることでワインを守ってくれています。遊離型亜硫酸は糖にも結合する性質があります。そして結合型亜硫酸となってしまったらワインを守る力も失います。キャッチする手が空いていることが重要ってことですね。

雑に造られたワインや酸化したワインは、丁寧に造られた健全なワインに比べて、アルデヒドやケトンを多く含むため、結合してワインを守る力をすぐに失ってしまいます。そのために、より多くの亜硫酸の添加が必要となります。


品質の高いワインは、必要最低限の亜硫酸をしっかりと理解して段階的に用いながら、葡萄本来のポテンシャルを最大限に引き出し、それをしっかり守って最高の傑作となるワインに変えることが出来ます。そこに醸造家の技術と知恵が光るのです。

また「酸化防止剤無添加ワインってあるじゃない。入れなくてもワイン自体は造れるってことでしょう?」って思う方もいらっしゃるでしょうが、酸化防止剤無添加のワインを造るためには、人的介入が多くあり、皮肉にもとても葡萄本来のありのままの姿を映した自然なワインとは言い難いです。

酸化防止剤無添加ワインは各メーカーによって製造方法は違いますが、

  • アセトアルデヒドの生成を抑えること
  • 極力酸化の機会を与えないよう工夫すること(大規模な近代設備が不可欠)
  • 凍結果汁を使う
  • ワイン酵母を選択的に使う(亜硫酸を生成しないもの)
  • 加熱殺菌処理
  • 目の細かいフィルターで酵母などを濾過(ワインの成分も多く失われる)

など。もちろん消費者のニーズに応えるため、各メーカーが努力して「酸化防止剤無添加ワイン」をより美味しく作っています。しかしながら、それを造るためには非常に多くの科学的なプロセスが必要だということも知ったうえで選択をしてください。

また最近はやりのオーガニックワインを選択肢に挙げる方もいるでしょう。ここに関してはまた別の記事でまとめたいと思いますが、自然派ワインと呼ばれるものの中には、「極力人の手を加えない」ということが大切とされており、添加物のような人的介入を嫌います。

オーガニックワインは亜硫酸塩の含有量規定値を通常より低めに設定してあり、エコセール、デメテール、ABなどのオーガニック認証機関のマークがラベルについているものは目で見てもわかりやすいですね。ひとつの基準にしてみてください。

ただしここで注意していただきたいのは、オーガニックワインで亜硫酸無添加で造られたワインには、汚染や酸化されて劣化したワインである可能性も大いにあるということです。亜硫酸なしのワインは言ってみれば丸裸の状態。酢酸菌が増殖してワインビネガーみたいになってしまうリスクだってないわけではありません。

亜硫酸塩はワインを飲むと頭が痛くなる直接の原因ではない。

①ワインに含まれる亜硫酸塩の量

一般的にワインに含まれる亜硫酸塩は極々少量。二酸化硫黄は酸素を取り除く過程で、どんどん消滅していきます。そして極微量の硫酸を生成しますが、人体にとってもワインにとっても無害と言われています。

どんな物質も成分も基本的に同じですが、どんなに体に良いと言われるものがあったとしても限度を超えて摂りすぎると有害に転じます。亜硫酸塩ももちろん高濃度で摂取すれば、人体にとっても有害です。

しかしながら、ワインに含まれる亜硫酸塩の基準はどのように定まっているのでしょうか。

エノテカさんの記事【酸化防止剤がワインに与える効果と影響 | エノテカ – ワインの読み物 (enoteca.co.jp)】にある表がとても分かりやすいので、お借りいたしました☟こちら☟

日本における食品添加物規定(最大含有量)

EU 亜硫酸塩添加規定(最大含有量)

この表から読み取れることを簡単にまとめると、

  1. 日本における食品に添加される「亜硫酸塩」に比べて、ワインは低めの基準値。
  2. EUの「亜硫酸塩含有量」の規定は、日本の基準よりさらに厳しい。

ということです。

加えて、下記の表を見ていただければその他の食品への「亜硫酸塩」の含有量規定がお分かりいただけます。

各添加物の使用基準及び保存基準 (平成29年6月23日改正まで記載)
(厚生省告示第370号 食品、添加物等の規格基準より抜粋)

☟こちら参照しました☟
e5fa1c37b97cd7751ae74b0fbc78567833f7c77b.pdf (ffcr.or.jp)

ワインにおける「亜硫酸塩」は酸化防止剤としての抗酸化作用を発揮するために添加されるが、白ワインに比べて赤ワインはポリフェノール(色素成分)の含有量が高く、ポリフェノールは抗酸化作用を持つので、上限が50ppmほど低い設定。また亜硫酸は糖とも結合するので、残糖度が高くなると必要量が多くなる設定となっています。

②亜硫酸塩が頭痛の原因ではない逆説的理由

皆さん「ドライフルーツ」食べたことありますか?
ドライマンゴーでもドライパイナップル、ドライアップルでも何でもOKですが、おそらくお気づきの通り「亜硫酸塩」がワインの含有量規定値の5.7倍も高い設定となっています。

もちろん食べる量によっても摂取量自体は変わってくるでしょうが、頭痛の原因が亜硫酸塩だと仮定して言えることは、

ドライフルーツを食べて、頭が痛くなったことがなければ、ワイン飲んでも頭は痛くならない。

ということです。

では、頭が痛くなる原因は何でしょうか。
基本的には、ワインの成分中に含まれる血管拡張作用のある物質に因果関係があると言われています。

①アセトアルデヒド

人体にとって一番の有害な異物は、ワインという括り関係なく「アルコール」です。

アルコールは体内に入って、肝臓で「アセトアルデヒド(有害物質)」に変換され、さらに「酢酸(無害物質)」に分解されて、血中に入り、尿や汗として排出されます。

前回の記事でも述べましたが、アジア系の黄色人種はアルコール分解酵素活性が弱い人(=アルコールの弱いor全く飲めない人)の割合が多く、日本人も漏れなく該当します。

肝臓で「アセトアルデヒド→酢酸」の分解が追い付かず、アセトアルデヒドが血中に流れ出てしまって脳にまで巡り、血管拡張作用やその毒性を発揮して、頭痛がするということが主な原因です。特に日本人はなおさら。

亜硫酸塩は肝臓の働きを鈍らせる作用があるので、アルコール代謝を鈍らすという意味においては、間接的に頭痛に関わっていると言えるかもしれませんが、直接的な原因ではありません。

②チラミン

赤ワインの醸造において、酸味をまろやかにする目的で行われる「マロラクティック発酵(乳酸発酵)」(※また醸造の話は別の機会にさせていただきます🐟)

この発酵を行う際に利用される2つの乳酸菌の内のひとつ「ラクトバチルス属菌」がチラミンを生成することがわかってきているとのこと。

このチラミン自体には「血管収縮作用」がある一方で、効果が切れてしまうとその反動で血管が拡張し、血圧の上昇と心拍数の上昇を引き起こします。それが頭痛を引き起こす原因になってしまいます。

さらにワインのお供であるチーズも乳酸発酵食品ですから、チラミンを含む最も代表的な食品です。赤ワインとチーズの組み合わせで楽しんでいるときにチラミン由来の頭痛を最も引き起こしやすくなると言えます。

ただし全員がチラミンで頭痛を起こすわけではありません。
人間の体内には、「モノアミンオキシターゼ」という酵素を持っていますが、この酵素が活性型か不活性型によって、チラミンを摂取すると頭痛が発症するかどうかを決めます。

またパーキンソン病やうつ病の治療薬でモノアミンオキシターゼ阻害剤(MAOI)を服用している場合、チラミンを摂取してしまうと、致命的な高血圧や重篤な肝機能障害を生じることがあるため注意が必要です。

③ヒスタミン

ヒスタミンという物質はアレルギー炎症を起こす物質として知られています。アレルギー反応により肥満細胞がヒスタミンを分泌します。

ヒスタミンを多く含む食品としては、鮮度の落ちた生鮮食品(魚・肉・卵など)、加工肉(ハム・ウインナー・ソーセージ・サラミ・ベーコン)、ドライフルーツ、発酵食品(キムチ・チーズ・パン・アルコールなど)が挙げられ、私たちの口にするものがたくさんあります。

日持ちさせるように加工したものに細菌がふえたり、日持ちするものが傷んできたり、熟してから食べるフルーツが傷んできたりすると細菌がヒスチジンというアミノ酸からヒスタミンを生成します。

ヒスタミンは腸内細菌(善玉菌)や体内の酵素が無毒化してくれますが、何らかの原因でヒスタミンが処理しきれなくなり、ヒスタミンが増えている状態をヒスタミン不耐性と呼びます。

血管を拡張させ、頭痛、むくみ、じんましん、皮膚・目・鼻のかゆみ、鼻水・くしゃみ、気管支収縮(喘息)などのアレルギー反応を起こします。

ワインで頭痛がする原因のまとめ

上記の内容から答えを導いてきましょう。


赤ワイン(=マロラクティック発酵の工程がある ※白ワインでも存在する。)を自分のアルコールのキャパシティを越えずに飲んだ時に限って頭痛がする場合は、

  • モノアミンオキシターゼの不活性型をもっている
  • ヒスタミン不耐性をもっている

ことが原因となり、

  • チアミンの血管収縮作用→切れてからの血管拡張作用
  • ヒスタミンの血管拡張作用

によって、脳内の血管が収縮した後、一気に拡張することで頭痛が生じていると理解できます。

それ以外の場合は、おそらく自分の体調があまり芳しくなくて、アルコール分解酵素活性の限界を超え、アセトアルデヒドが悪さをしている…すなわち、飲みすぎ!が主たる原因であると思われます🐟💦

自分の身体の状態がワインに合っているかどうか。そこが頭痛に直結していたんだね~。
赤ワインで頭痛は起こりやすいみたいなので、白ワインやスパークリングワインを楽しむようにすると良いかもしれませんね。そのときは「マロラクティック発酵(乳酸発酵)」させているワインか調べてから、そうじゃないものを選択しましょう🍷

亜硫酸塩と頭痛の因果関係の誤解。
これでご納得いただけましたでしょうか🐟?ここまでの長い文章をお読みいただいたあなたは、もうワインの魅力に引き込まれている…なぜならワインに興味が高ぶってなければ、こんなの読まない!笑

また次回をお楽しみに~🐟🍷

『ワイン飲むなら、とりあえずコレだけ読んどけば?』Kindle版 発売中。
製本で欲しい方は、こちら☟🐟☟

ワイン飲むなら、とりあえずコレだけ読んどけば?〜ゆとり世代のソムリエがおくるワインバイブル〜 | 製本直送.com | 1冊から注文OK。安さと高品質のオンデマンド印刷 (seichoku.com)