【サカナ的分析】日本人がワインを飲まない2つのワケとは!?

【サカナ的分析】日本人がワインを飲まない2つのワケとは!?

こんばんは。
ソムリエ【謎のサカナ】です。

前回の記事では、サカナがワイン初心者の皆さまにも「ワインを楽しめるようになってほしい」という思いを伝えさせていただきました。

まだご覧になってない方はこちらから☟check!

歴史的に見ても着実に日本のワインの消費量は増えているのですが…


どうやら日本人にとってワインというお酒は、ビールや酎ハイ、サワー、カクテル、ハイボールなど他のお酒に比べて

なんか、とっつきづらい…

と多くの方に思われていることが見えてきました。

ワインって確かに難しいお酒なんですが、
ここまで日本にワインが浸透していないとは…正直ショック。

つい先日も高校時代からの付き合いになる親友くんをおうちに招いたときのひとコマですが…

お土産にカマンベールとフェタチーズ(羊や山羊の乳で作られるギリシャの代表的なチーズ)買ってきたよ!

え!めっちゃ嬉しい~(^^♪
せっかくだから、スーパーでワインでも買おうか~!

お!さすがソムリエ~♪お任せしまーす!

牛肩ロースのステーキも用意してるから、
チーズにも合うミディアムくらいの赤ワインにしよう🍷

久しぶりのおうちで手作りソムリエ飯をつくるサカナ🐟…

美味しいごはんありがとう!
やっぱりワインって改めて飲むと美味しいね🍷

こちらこそお土産のチーズのおかげでよりワインのある食事を楽しむことが出来て幸せ~♪
「改めて」ってことはやっぱり普段からなかなかワインって手に取らないってことよね?

そうだね~やっぱりワインってなかなかハードル高くってさ~。
サカナみたいに場とか料理に合わせてぴったりなものを選ぶことが出来るわけでもないしね…

確かにワインって日本人になかなかなじまないよね。
その原因が何なのかサカナの考え聞いてもらってもいい~?

日本人がワインを飲まない2つのワケ。

データから導く日本人のワイン消費量

サカナがダンベルくんとおうちごはん会で話してきたように、やはりワインは日本人にとってハードルが高くなかなか手が出ない=消費されないという構造が見えてきました。

それはデータからも裏付けられるので、見てみましょう。

国税庁課税統計データから、ワインの消費量のイメージを割り出してみましょう。

グラフから読み取れることをまとめると、

  • H11年をピークに日本人の酒類消費量は年々減少している。
  • 全体的な消費量が減少傾向の中、果実酒(ワインを含む)は徐々に微増傾向にある。
  • 果実酒(ワインを含む)の消費量は、酒類全体に対して4.4%のシェア。

ということが読み取れてきました。

顕著に減少しているとはいえ、やはり根強いビールシェア。そして割合を大きく成長させているリキュール(カクテル、酎ハイ等)。それと比べると果実酒(ワインやシードル等)は未だ4.4%のシェアしかありません。

蛇足ですが、日本酒(清酒)の消費量は年々顕著に減少しています。日本酒も好きなサカナはこの事実も少し悲しい…

そしてこちらのランキングはWHOが出している、「一人当たりの年間アルコール消費量(リットル)」の2018年分の表です。日本は世界で63位

ちなみにフランスは8位(11.24リットル)、アメリカは37位(8.82リットル)、イタリアは48位(7.81リットル)というデータとなっており、様々な要因があるとは思いますが、欧米諸国に比較すると消費量は少ないと言えます。

またワインに焦点を当てると、

フランスは1位、アメリカは43位、イタリアは3位に対して、日本は89位と全酒類のデータよりランクは下がる結果に。(下記参照☟)

[内訳] – ワイン消費量 – GLOBAL NOTE

このように統計データを見てきましたが、やはり日本人のワイン消費量はまだまだ…と言わざるを得ませんね。

サカナ的な日本人がワインを飲まないワケの考察

①日本人のアルコールの弱さ

様々な研究結果から

日本人はアルコールに弱い

ということが分かっています。もっと言えば日本人だけでなく、アジア系の黄色人種(=モンゴロイド)は遺伝的にお酒に弱いことが分かっています。

お酒を飲むと、アルコールは肝臓で「アルコール脱水素酵素」の働きによってアセトアルデヒドに分解され、アセトアルデヒドは「アセトアルデヒド脱水素酵素」の働きによって無害な酢酸に分解されます。

この2種類の酵素のうち、「アセトアルデヒド脱水素酵素」には、血中のアセトアルデヒド濃度が高いときに働く「ALDH1」と、主にアセトアルデヒド濃度が低いときに働く「ALDH2」があります。この「ALDH2」の働きが、もともと弱いか、全く持っていない人がいる割合が日本人を含むアジア人には多いです。

その割合はなんと50%近くにもなります。

逆に欧米人には遺伝的にほぼ0%というのですから、アルコールを消費するそもそもの母数的なポテンシャルが違いますよね。

日本人の飲酒できる人口のうち、半数近くが「お酒に弱いorお酒が全く飲めない」

すなわち、アルコール消費量のそもそもの母数が限られており、かつアルコールが強くない日本人はもちろんアルコール度数の低いお酒を選択する。そして、飲んだとしても量が飲めない

この原因から日本人がワインを手に取らない行動のイメージが見えてきます…

  1. ワインのアルコール度数は大体10~14%くらい。
  2. ワインのボトル容量は750ml。

そのため日本人は、

  1. アルコール度数の低めなビールや酎ハイ、サワーなどを手に取る人の割合が多い。
  2. アルコール度数の高いお酒をたくさん飲めないので、容量の選択肢が多いものを手に取る。ビールや酎ハイには350ml缶、500ml缶など各個人に合わせた容量を選択できる。

ということなのですね。

ワインはハーフボトルサイズもちらほらとはあるものの、基本的には750ml(日本ワインには720ml瓶もありますが)一択!!ひとりで手軽に晩酌するにはハードルが高い…という結果ですよね。

サカナもソムリエとして意識してワインを飲んでるとはいえ、やはり普段の晩酌は基本「缶ビール」。ワインってやっぱり2人以上いないと開けづらいし、余ったら冷蔵庫に入れるのもかさばるし…手に取りづらい要因として、サイズ感は重要だと思う!

350ml缶サイズのワインとかあれば、もっと手に取りやすいよね。

最近、成城石井とかの高級スーパーではちらほら見かけたり、サントリーさんがワインソーダにレモンを絞ったイメージの酎ハイスタイルの商品を打ち出したりしてはいるけど…まだまだ先は長そうだね…そして選択肢の幅が薄いとやっぱりワインの本当の美味しさを実感してもらいづらい気がするね。カジュアルに飲めるスタイルのワインと、しっかり瓶熟成されたクラシックなワインが両立できる未来を模索していくべきかもね!

②文化的背景

旧世界などと称される歴史深いヨーロッパのワイン産地(フランス、イタリア、スペインなど)に比べ、日本にワインがやってきたのは、室町時代後半ごろ(西暦1400~1500年くらいの話)。

この時代に書かれた公家日記「後法興院記」に、「珍蛇(チンタ)」というお酒を飲んだという記述があり、この「珍蛇」は、スペインやポルトガルから伝わった赤ワインを指すと考えられています。
また、この少し前の文献にも「南蛮酒」を飲んだという記録があり、こちらもワインであると考えられています。

1549年イエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルは、キリスト教布教のため、鹿児島を訪れ、自身が布教したい地域の大名にワインを献上していきます。オランダやポルトガルとの交易が盛んになると、さらにワインは広まっていきます。

1870年(明治3年)に山梨県甲府市で、山田宥教(やまだ ひろのり)と詫間憲久(たくまのりひさ)が「ぶどう酒共同醸造所」というワイン醸造所を設立。甲州種などを用いて、日本で産業的に初めて国産ワインが製造されます。
しかし、彼らが全財産を懸けて挑んだワイン造りは、製造技術の低さ、防腐剤の不備などで経営難に追い込まれ、数年で終わりを迎えます。その二人を皮切りに、たくさんの人々がワイン造りに挑みますが、ことごとく失敗。そして1877年に日本初の民間ワイン醸造所が設立。それが「大日本山梨葡萄酒会社」(メルシャンの前身)です。

ここまでの歴史をみて分かるように、1900年近くになってようやく日本国内で自国産のワイン生産ができるようになったということ。

まだ日本でワインが紡いできた歴史はたった150年程度しかないのです。

それに比べて、ヨーロッパのワイン文化はメソポタミア文明にまで遡り、フランスは紀元前600年ごろからワインの歴史が始まっています…その差は歴然。

さらにはワインはキリスト教にとってなくてはならない存在。宗教も絡むほどの強い文化的なものですから、日常生活における必要性のレベルまでも全くもって違います。

1964年の東京オリンピックから徐々に日本でのワイン消費量が増え始めますが、時は過ぎ…

2003年から開催されている国産ワインコンクール(現:日本ワインコンクール)は、全国各地のワイン製造者に大きな刺激を与え、日本ワインが大きく注目されるきっかけに。

近年、日本ワインの中には海外のコンクールで金賞を受賞するものが出てきたり、海外で醸造学の学位を取得したり、海外の有名ワイナリーで修業を重ねて、新規ワイナリーの設立をするなど新規就農でぶどう栽培を始めて、将来的にワイナリー設立を目指す農業者の方が増えていたりと、その成長ぶりには目を見張ります。

国税庁の「国内製造ワインの概況」(平成29年度調査分)によると、平成30年度3月末現在で生産・出荷実績のあるワイナリー数は303となっています。

かつての濃縮還元ぶどう果汁や輸入したぶどう果汁を用いたあまり美味しいとは言い難い国産のワイン(国産ワインであって、日本ワインではない)のイメージを払拭するほどの、高品質なワインが現在日本で育ったぶどうから生み出されています。サカナも日本ワインに今はまり中…🐟

ぶどうが植樹されてから3年間は実を付けず、7年くらいになってようやく商用的に収量が確保できるようになります。その後は収量制限をしながら、ぶどうの品質の高さを安定的にコントロールしていきます。一般的に質と量のバランスが良いと言われるのが樹齢35年。

ぶどうの農業生産的な側面から見ても、日本ワインのポテンシャルはまだまだこれからということになります。

やっぱりサカナもワインを飲みはじめて好きになったのは、この業界でワインに触れる機会が多かったから。日常的におうちにワインが並ぶことなんて、日本の一般家庭で、特に山梨のようなワインの特産地でもなければ、まずないことだよね。

家で親父がワインをかっこよく飲んでたら、小さい時からワインという存在に対して親近感も植えつけられるし、「飲んでみたい!」って憧れとかも抱くだろうけどね。

そんなノーブルなおうち…サカナみたいなド田舎出身、一般庶民代表の人間からしたら想像もできないね…家にはビール、焼酎、日本酒、梅酒、酎ハイくらいが普通だよね。今でこそ、ウイスキーとかカクテル用にリキュールやスピリッツも増えてると思うけどさ。

まとめ

今一度ここまでのサカナ的考察をまとめてみます~

まとめ:日本人がワインを飲まない2つのワケ

①日本人のアルコールの弱さという遺伝的原因による行動の制限

日本人を含むアジア系黄色人種は、約半数近くの人口が「お酒に弱いorお酒を全く飲めない」
⇒アルコール度数の低いもの&容量の少ないものを選択する人が多い。

②日本のワインの歴史の浅さという文化的原因による依然とした成長途上段階

日本で本格的にワインが消費されるようになったのはごく近年。
⇒おうちでワインを見かけることのなかった日本人がワインの存在を意識するまでのタイムギャップがある。

宗教的な結びつきがある欧米人に比べ、ワインの必要性が薄い。
⇒日本人においては日々のお酒の選択肢の中で、ワインの存在価値を見出す必要がある。

サカナは日本人にもっとワインのある幸せを知ってほしいと常々思っています。
日本人にワインがまだまだ根付いていないことは、サカナが考察してきたように理解できました…しかし、成長途上であるので、伸びしろしかない!サカナのワイン講座で、もっと多くの日本人にワインというものを美味しく楽しく知ってほしいと思います。

サカナのワイン講座では、ワイン初心者の方でも理解できるようわかりやすくワインのお話をしていく予定です。


「ワインのこんなことが知りたいかな」「巷のワイン本では、こんなことまで書いてないだろうな」「日常生活に結び付くワインネタがあるとワインに親しみを覚えやすいかな」「最近取り上げられているワインの様々なトレンドについて書こうかな」「いまさら聞けないと思っているワインの基本」などなど…

ワインをまだ知らない、知り始めたばかり、ワインに関心が高まってきたけどなかなか情報がないなどの方々をお助けできるよう、ソムリエ【謎のサカナ】は頑張っていきます🐟🍷応援してね♪

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