【ワイン基礎:葡萄品種①】ワインを1番特徴づけるものは『葡萄品種』である。

【ワイン基礎:葡萄品種①】ワインを1番特徴づけるものは『葡萄品種』である。
ソムリエ サカナ

こんばんは。ソムリエのサカナです。

本日はサカナらしいワイン講座として、ワインの基礎編をお話しします。

ワインって色んな種類があるけど、その違いになっている一番の要因は何なの?

テロワールと言われるその土地らしさ、栽培方法、醸造方法、様々なものが複合的に合わさってワインというものが出来上がっているので、これだけ!というのは難しいんだけど、一番違いを生み出す要因となるのは間違いなく『葡萄品種』の違いだね。

葡萄品種の基礎①

葡萄の分類

葡萄属=Vitis(ヴィティス)属には多くの品種が存在しており、そこからさらに細かな分類としてvinifera(ヴィニフェラ)、labrusca(ラブルスカ)などの品種があります。

主なワイン用葡萄栽培品種は、【ヴィニフェラ品種】【アメリカ系品種】【交配品種】に大別され、日々研究が進められています。ここにヤマブドウのような【野生種】があり、ワイン醸造に用いられるものや、遺伝子的に有用な特性があれば交配品種に用いられたりしています。

今回の内容では、その分類と特徴を整理してみましょう。

①ヴィティス・ヴィニフェラ(ワイン用ヨーロッパ原産品種)

フランス、イタリアなどの旧世界と呼ばれる伝統的なワイン産地であるヨーロッパにおいて、最も重要な歴史ある品種が【Vitis vinifera(ヴィティス・ヴィニフェラ)】です。

このヴィニフェラの原産地は、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方。

出典:コーカサス地方 地図 – Bing images

今ワイン界でも注目されている【ジョージア(旧グルジア)】が位置するあたりですね。

そして新石器時代(諸説あるが1万年前くらい)に葡萄栽培は始まったと言われ、古代エジプトのピラミッドには葡萄とワイン造りの記録が残されています。

その後フェニキア人やギリシャ人の貿易によって地中海沿岸に広がっていき、ローマ帝国によってヨーロッパ内陸部にまで伝播されました。また同時期に東方のアフガニスタンや中国などアジアにも伝播していった品種もあります。

これらのヴィニフェラ品種は、その原産地の伝播から【西洋系(occidentalisオクシデンタリス)】【黒海系(ponticaポンティカ)】【東洋系(orientalisオリエンタリス)】の3つの生態系に分類されています。なんか戦隊ものの名前みたいでカッコいいですね(笑)

西洋系の品種の多くはワイン醸造用で、果粒が小さいのが特徴です。それに対して、東洋系の品種は果粒が大きめで、生食用の品種や種無し品種なども含まれます。

そして原産地になっている地域性から、これらのヴィニフェラ品種は地中海性の夏季に雨の少ない気候に適しています。

またアメリカ大陸から後に持ち込まれた「ベト病」や「ウドンコ病」に弱く、さらに寄生害虫の「フィロキセラ」にも耐性がないため、防除する必要性があります。そのため現在では、フィロキセラ耐性を持つ台木に接ぎ木をする形でヴィニフェラ品種は栽培されています。

出典:葡萄 苗木 接ぎ木 – Bing images

現在、高品質なワインを造る国際品種と呼ばれるヨーロッパ原産の葡萄品種(シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、リースリング、ソーヴィニヨン・ブランなど)やその他旧世界の各国を代表する葡萄品種(イタリアのサンジョベーゼやネッビオーロ、スペインのテンプラニーリョなど)はもれなくこのヴィティス・ヴィニフェラ品種にあたり、やはりワインを造るのに向いている品種と言えます。

②アメリカ系品種

出典:コンコード/Concord<ぶどう:旬の果物百科 (foodslink.jp)

Vitis labrusca(ヴィティス・ラブルスカ)のような北米系野生種を用いた交配品種で、フォクシーフレーバーと呼ばれる「葡萄ジュースの甘い香り」を持つ品種を指します。コンコードやナイアガラ、セイベル系の品種がワイン用として代表的ですね。日本ワインにおいても多くみられる葡萄品種です。

またこのフォクシー・フレーバーは、ヨーロッパ諸国では馴染みがなく、ワインにこの香りがすることが嫌われる傾向にあります。フォクシー・フレーバーを構成する香り成分はアントラニル酸メチル、ο-アミノアセトフェノン等の一連の化合物ということがわかっていますが、これ以外にもさまざまな要因が組合わさることにより、その香りが決定づけられているとのこと。

ただ日本人にとっては馴染みのある香りで、独特なこの香りを魅力の一部と捉えることもできます。フォクシー・フレーバー=ネガティブと一辺倒に捉えるのではなく、それが生きているのならポジティブに捉える寛容さがあるべきだとサカナは思っています。

アメリカ系品種は、耐病性・耐寒性に優れており、日本のような高温多湿な夏、北海道のような厳しい寒さにも栽培適性があることも、日本に根付くきっかけとなっています。

また前述のように「フィロキセラ」は葡萄の根に寄生する害虫でもともとアメリカ大陸に存在していました。その中で生き抜いていくためにアメリカ系葡萄品種は、フィロキセラに対して耐性を獲得しており、これが現在葡萄の台木として用いられています。

③交配品種

出典:マスカット・ベーリーA 葡萄 – Bing images

ワイン用に向く伝統的なヴィニフェラ品種に耐病性や耐寒性などを持たせるために、葡萄の交配育種は長く続けられてきました。様々な葡萄への病害や害虫被害を受け、そこに対処するために適性を持つ葡萄品種が研究者によってつくられています。

フレンチ・ハイブリッドと呼ばれるヴィニフェラ品種とルペストリス(Vitis rupestris)などの北米系野生種が繰り返し交配・育種されて生み出された「セイベル系」「ヴィダル・ブラン」などは、台木を用いることでフィロキセラに対処できること、また伝統的なヴィニフェラ品種よりやはり品質が劣ることなどから、旧世界では現在ほとんど栽培されていません。

ただし、日本のようなヴィニフェラ品種の栽培にあまり向いていない土地柄では、栽培適性の優れた品種を育成することはとても有意義です。日本を代表する交配育種の第一人者が有名な「川上善兵衛(1868-1944)」であり、現在日本を代表する【マスカット・ベーリーA】や【ブラック・クイーン】などの日本ワインとして重要な品種を生み出しています。

【品質】と【栽培適性】のバランスを考慮した交配品種の育種が、特に日本のようにヴィニフェラ品種の育ちにくい土地においては重要だと理解できました。その中で、現在においても【ヴィニフェラ品種×野生品種】【ヴィニフェラ品種×在来品種】【ヴィニフェラ品種×ヴィニフェラ品種】など多くの交配品種が生み出され、日本独自の【バリエーションの豊かさ】を創り上げています。

④野生品種

出典:山ぶどう/ヤマブドウ:旬の果物百科 (foodslink.jp)

Vitis属には、65~70の野生種が報告されており、北米系と東アジア系に大別されます。ヨーロッパの野生品種はヴィティス・ヴィニフェラの祖先種であるVitis silvestris(ヴィティス・シルヴェストリス)のみで、それ以外は絶滅したと考えられています。野生種は基本的に雌雄異株(雄花と雌花とが別の個体に生ずる植物)であり、この中から突然変異で生じた雌雄同株のものが栽培種化されたと考えられています。

北米系野生種は、アメリカ東海岸原産で、ヴィニフェラ品種よりも耐病性が強く、フィロキセラに対して根には耐性があります。

東アジア系野生種には、日本にも自生する「ヤマブドウ」などがあり、北米系含めてやはり野生種には耐寒性・耐病性などの生き抜くための優れた特性を示すため、交配において有用な遺伝資源として重宝されています。野生に生きる品種は様々な環境に適応して、生存本能を高め、今まで生き抜いてきた強さがあるということですね。

現在日本において生み出された「小公子」や「ヤマソービニヨン」などにはこの「ヤマブドウ」が用いられています。

まとめ

ワイン用の葡萄と言えども、様々な品種が用いられていることがわかりましたね。ポイントをすこしまとめておきましょう。

  1. ワイン用に適するヨーロッパ原産の葡萄品種は【ヴィニフェラ品種】
  2. 【ヴィニフェラ品種】は高品質のワインを造るが耐病性や耐寒性がなく弱い
  3. 【アメリカ系品種】にはフォクシー・フレーバーという特有の香りがある(旧世界で避けられる)
  4. 【アメリカ系品種】はフィロキセラ耐性があり、台木には欠かせない
  5. 品質と栽培適地を鑑みて、より栽培地に適した葡萄の品種交配・育種が行われている
  6. 【アメリカ系品種】【野生種】と【ヴィニフェラ品種】を掛け合わせて、様々な交配品種がつくられている

日本のような高温多湿な土地では、ヴィニフェラ品種が育ちにくいため、交配品種の栽培適性がとても重要です。そしてそれが日本独自の品種のバリエーションを生むことに繋がっているのも興味深いですね!

それではまた次回をお楽しみに~🐟🍷

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