【ワインが好きになる近道!?】人の感じる「味わい」からワインを紐解いてみる。
- 2021.04.29
- ワインを知る ワインを飲む
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こんばんは。ソムリエのサカナです。
皆さん、こんな経験ありませんか🐟?
- 「子供のころは食べられなかったけど、大人になって食べられるようになった。」
- 「子供のころ嫌いだったから、長い間食べなかったけど、大人になって食べてみたら意外といけた!」
- 「食わず嫌いだったけど、食べてみたら案外美味しかった。」
食べ物や飲み物に対して「好き嫌い」という作用が現れるメカニズムは、非常に多くの研究がなされています。
しかしながら、まだまだその全貌は明らかにされておらず、謎に包まれております。
意外とワインという存在にまだ慣れていないワイン初心者にとって、そもそも
ワインが美味しく感じないんですけど…
というお声がよく聞かれます。別にあなただけがそう思っているのではなく、多くの人がそう思ってますし、サカナも最初は同じくワインを美味しいと思えませんでした。
しかし前述のように「時間の経過とともに、自分の中の何かが変化して、苦手だったものが美味しく感じるようになった」というメカニズムが人間には備わっています。本能的なサバイバルを繰り広げている動物たちよりも、食事を文化的に楽しむことが出来る人間の方が、その可能性に秀でているとサカナは思います。
サカナがかつて大学生だったころ、「飲み会」というものに参加してました。
そこではじめて飲んだビールがなんと…
にがー…まずー…
だったことを今でも覚えています。
しかし飲み会でお決まりの「とりあえずビールで!」っていう言わば同調圧力的なものに抗う術を持たなかったサカナ。そしてやっぱり「ビールを美味しいと思えるようになりたい!」という変な憧れの中で、我慢して飲み続けていました。
そうして時は3か月くらい経った頃でしょうか。ある夏の暑~い日のこと。
茹だる暑さの中の飲み会で、いつものように「とりあえずビールで!」から始めたわけです。しかし、その日はいつもと違ったんです。
かんぱーい!
ゴクッ…!ゴクゴクッ!!
…え!?めっちゃうまい!!
麦の旨味と、のど越しの爽快感!
たまらんわ~!!🍺✨
ビール飲めちゃったのレベル越えて、急にめっちゃ美味いに変わったんです。ビビった!
サカナの推察ですが、きっと次のように様々な条件が整った結果が集約されて「ビールうまい!」になったと考えました。
- ビールというものを飲み続けた結果、時を経て、苦味に対して慣れた。
- ビールを最初の乾杯で飲むことによって、場の空気を乱すことなくスムーズに会がはじまり、気も遣わずに済む。
- 夏の暑い日に、キンキンに冷えたビールという最高の状態で飲めた。
サカナは人間の味覚というものが、経験上から何となーくですが、
本能的な側面と学習的な側面を兼ね備えている
と理解しました。そして、それは様々な研究結果や論文からもやはり明らかになっています。
今回のブログ内容は、人間の感じる味わい、特に味覚について理解を深め、「ワインを美味しく飲むために必要なこと」は何か、その答えを導き出してみたいと思います~🐟🍷
5つの基本味(五味)を人はどのように捉えているか
美味しいとは?
まず人間は「これ美味しい~!」と料理を食べる際に、味覚にだけ頼っているわけではもちろんありません。
- 「これめっちゃ美味しそう!」(見た目・視覚)
- 「ん~、いい匂い!」(香り・嗅覚)
- 「お肉やわらかーい!ジューシー!」(口中のストラクチャー・食感・触覚)
- 「シャキシャキ、ポリポリ、カリカリ」(美味しい音・聴覚)(食感・触覚)
- 「甘酸っぱーい。」(味覚)
- 「あったかい or 冷たい」(温冷覚)
このように美味しいという判断は五感をフルに使って感じているのがわかると思います。
そしてここに「豪華絢爛なレストランの煌びやかな雰囲気の中で、フレンチだなんて最高!」(環境)、「今日は体調良いからおなか一杯食べるぞ~」(心身の体調)、「この生産者のつくるアスパラガスは有機栽培で、味も濃いんだ!」(ストーリー、先入観)などの人間特有の思考がプラスされ、「美味しいという印象」をつくっています。
味覚プロセスの理解と五味+αの味わい
ここではその中でも「味覚」にフォーカスします。
皆さん基本五味って覚えてますか?「甘味、酸味、塩味、苦味、旨味」の5つです。「渋味、辛味」は触覚に分類される口中の刺激なので、厳密に言えば味覚ではありません。
【味覚センサーの仕組み(1)】おいしさと味覚について | 味博士の研究所 (aissy.co.jp)
この表がとても分かりやすいので、引用させていただきましたが、そもそも人間の感じる五味には、「生理的に好きな味」と「本能的にはNGだけど、学習的に好きになれる味」の2つに分けられます。前者は「甘味、塩味、旨味」、後者は「酸味、苦味」です。
人間も生物のひとつであるため、「生存本能」というものが備わっています。それが「味覚」にも作用を及ぼしているということ。食べ物や飲み物は自分の身体をつくるもの、生きるためにどんなものを食べるべきか本能的に好まれるものに私たちは実は操作されています。
美味しいものは脂肪と糖で出来ている。
どこかで聞いたことあるフレーズですね。
糖も脂質もタンパク質も人間のエネルギー源になります。つまり人間が生きるために、それを摂取したくなるように味覚が求める味ということです。面白いですね。
同じように身体に必要な栄養素を含む味わいのものは好まれ、「塩味、旨味」も生理的に好きということです。
ではその反対に「酸味・苦味」は好きな味ではないのに認知できる…何故でしょうか。
本能的に「酸味=腐敗のサイン」、「苦味=毒物のサイン」と人間は認識しています。「甘味、塩味、旨味」と形は違えど、こちらも「生きるため」という意味では同じ役割です。腐ったものや毒の入ったものを食べると、もちろん身体を壊してしまったり、最悪の場合、死に至ることだってあるわけです。身を守るという意味で「酸味と苦味」を感じられるように人間は造られているんですね。
味覚の生理的な機能として、「私たちを守るために5つの味を感じてるんだ」ということがここまでで理解できたと思います。さらに辛味や渋味は口中の触覚(触って感じる感覚)に対して言われている味わいの要素であり、言ってみれば口の中に与える外的な刺激と捉えてください。
- 「辛味」⇒「口の中がヒリヒリする感覚」、「チクチクする感覚」など。
- 「渋味」⇒「口中や舌が乾いて、ざらっとした感覚」など
その刺激が脳に伝わって感覚として認知しています。
それではここでワインというものを構成している味わいを一旦つかんでおきましょう。ここまでに説明してきたお話が段々と結び付いてきます。
ワインを構成する味わいの要素
ワインには様々な成分が含まれていますが、主に味わいを構成しているものは何でしょうか。それがこちらの、
- 甘味
- 酸味
- アルコール感
- タンニン(渋味)
の4つです🍷
もちろん「塩味、旨味、苦味」もワインを構成する重要な味覚であり、「口中に与えるテクスチャー(食感)」などもワインを形作る要素となります。しかしここで敢えて構成力の強いものをピックアップすると上記の4つが主たる味わいをつくっています。
まず「酸味」というキーワードが出てきましたね!ここに日本人があまり得意ではない「アルコール感」。そして極めつけは「渋味」をもたらす「タンニン」です。
ワインがとっつきづらいのは、味わいの構成要素が大人だから。そこにつきます。🐟🍷
基本的に食中酒として幅を利かせるワインは「辛口」であり、これはすなわち「ワイン残糖分がほとんどない(=葡萄の持つ糖分を酵母が全部消化してアルコールに変換してしまっている)」ということで、実際の甘さは甘口のワインでない限りあまり感じません。お食事に合わせるには、辛口なお酒の方が相性は良いですからね。
葡萄由来のフルーティーな甘さのフレーバーはもちろん辛口ワインにも存在するので、構成要素としては大事なのですが、実際に感じる甘味はほとんどない。つまり「本能的には美味しいと思わない味わい」ばかりが幅を利かせているわけです。なんてこった🐟!
ではなぜ、私サカナとあなたはワインに惹かれてしまうことになったのか…それは私がビールの時に感じた衝動ともしかしたら似ているのかもしれません。
ワインが美味しいと思える状態とは何か
味覚の学習効果
味覚というものは、今まで見てきたように「本能的」側面がある一方で、「後天的・学習的」側面を持ちます。
子供のころの味覚は「本能的」な側面の方が優位に働くため、あなたも割と「好き嫌い」が多かったのではないでしょうか?
しかしながら、大人になっていくにつれて「嫌いだったものが、食べられるようになった。」、「嫌いだったはずなのに、食べられるどころか逆に大好物になってしまった。」なんてことも起こります。これが全て「後天的な学習効果」のおかげというわけです。
ガルシア効果・味覚嫌悪学習
すこし極端な例ですが、食べ物の好き嫌いや偏食の原因となる「ガルシア効果」をここで見てみましょう。
ガルシア効果とは何かというと、
ある食べ物を食べた後で、極度の嫌悪を感じ体調不良が発生すると、その味覚を手掛かりとして、その食べ物を摂取しなくなる現象のことである。
心理学用語:ガルシア効果【嫌悪味覚学習】|サイエンス.COM (viuoscience.com)
ガルシアらの研究チームがラットの実験で発見したもので、簡単にまとめると「本能的に美味しいと感じる甘い水分を与えている最中に、無理やり体調不良を引き起こすと、本来好ましいはずの甘い水分を飲みたいと思わなくなった。」ということ。そして、音や光などの条件ではこのような現象は起こらず「味覚」に限って現れる。
つまり「味覚」と「記憶や感情・身体の状況」は他の感覚と比にならないくらいの強い結びつきがあると言えます。
このガルシア効果はマイナスの結びつきを実験結果として証明しておりますが、逆にプラスの結びつきにおいても同様のことが言えます。「味覚」と「幸せな記憶」や「食材の栄養効果がもたらす健康の向上」や「テレビで見た身体に良いというイメージ」などが容易に結びついて「好ましい」と感じるようになるということです。
この引用を用いて、サカナが何を言いたかったかというと…
「ワイン好きな彼女に付き合って、我慢してワインを飲んでいたけど、その彼女の美味しそうな姿がとても魅力的で自分も毎回幸せな気持ちになる。そうしていくうちに、いつの間にかワインが好きになっていた!」
とか、
「ワインパーティーでみんなとワイワイ楽しむことがきっかけで、今まであまり得意でなかったワインが美味しく飲めるようになった!」
なんてことが、往々にして起こるんですよ🐟!!!ってこと。
そしてここでワインを美味しいと思うためにもう一つ大事な要素が人間には備わっているということを取り上げておきたいところ。
人間は慣れる生き物
人間は様々な刺激に対して、継続して受け取ると慣れるという性質があります。「味覚」にもその慣れというものが存在します。
舌の表面には、舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれるざらざらとした小さな突起が多数存在しており、味を感知する器官= 味蕾がここに集まっています。味覚は、その味蕾細胞が味の刺激を受けることで感じています。
そして身体の細胞は絶えず生まれ変わっており、 味蕾も例外ではありません。むしろ身体の中で新陳代謝が活発な部分であり、 約1か月で新しい細胞に生まれ変わっていると言われます。
すなわち、継続して摂取するビールの苦み、ワインの酸味や渋味にも人間は慣れていき、その裏側にある美味しさに直結する成分を掴めるようになっていきます。
ここで大切なのは、
「楽しい場、幸せな気持ちになれる場、体調の良い時、美味しくご飯とお酒が飲めるシチュエーション、適量のワイン摂取」などの自分にとってプラスの環境でワインを飲むことです。
幸せな気持ちになるという「プラスの記憶」、アルコールを適量飲んだときの「程よい高揚感」、お料理と組み合わせることによってワイン単体では感じない「相乗効果的美味しさ」などが、ワインを飲んだ時の「味覚」と結び付き、「酸味・渋味・苦味」などの学習的な味覚の要素に舌が慣れてきたとき…
ワインが美味しい~🍷✨
と思えるタイミングが必ずや訪れます!サカナが保証します🐟👍
反対に「体調が悪い時にワインを飲んで、気持ち悪くなってからワインにトラウマがある…」なんてことは絶対ダメ🙅NG!「味覚」と「体調や感情」への結びつきの強さは、「たった一回の苦い経験」で植えつけられてしまいます!要注意ですよ~。
そして酸味やタンニンの渋味に慣れて、感じ取れる要素が増えてくるタイミングで、「どんな味わいや風味を感じるだろうか?」と意識的にワインを味わう習慣を身につけていきましょう。
そうすることで味覚は鍛えられ、よりワインを構成する複雑な成分を楽しめるようになっていきます。
まとめ
ここまでサカナがお伝えしてきた内容をもう一度コンパクトにまとめたいと思います。
【ワインはそもそも本能的に好ましい味わいではなく、後天的に学習効果を経て美味しいと感じるお酒】
【WHY?】
⇒人間、そして日本人にとってワインを構成する味わいの要素が学習によって美味しいと感じるものだから。(酸味・渋味・アルコール)
【ワインを美味しく飲むために必要な人間の味覚の性質】
- 「味覚」は「楽しい、幸せ」などの記憶や心身への好影響と強く結びつく。
- 「味覚」を感じる「味蕾」は新陳代謝が活発で、約1か月ほどで新しい細胞へと生まれ変わる。
- 「味覚」は味の刺激に対して「慣れる」性質を持つため、本能的に好ましくない味覚の要素であっても、継続的に摂取することで慣れ、その奥にある美味しさの成分を感知できるようになる。
「楽しい場、幸せな気持ちになれる場、体調の良い時、美味しくご飯とお酒が飲めるシチュエーション、適量のワイン摂取」などの自分にとってプラスの環境で繰り返しワインを飲むこと。
ワインを好きになる近道がわかっちゃったね~🍷これでワイン初心者のあなたも意識的にワインを手に取りたくなってくるはず~👍
色んな視点からワインを捉えてみると面白いですね♪
それでは、また次回をお楽しみに~🐟🍷
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